このシンポジウムは、私たちの日常の心理臨床活動を検討し討論を深めていくことで、相互に交流しながら、思春期の心理臨床にとって大切な視点を共有していきたいというものである。
今回は、思春期と「こころのスイッチング」というテーマで考えてみたい。
最近の思春期臨床の中で、(こころの)スイッチをオン・オフにするという子どもたちが目につくように思われる。そういう子どもたちは、一見上手に切り替えているように見えるが、それでうまくしのいでいるというより、その場その場のしのぎ方として対処しているだけに過ぎない。葛藤を解決したり、こころの成熟につながった対処となっておらず、むしろ消耗して落ち込んだり、不適応が生じている場合が多い。
また、話していて急にボーッとした表情になったり、自分の行動(自傷や不安定な行動)や一時期のことを覚えていなかったりというように、スイッチオフして意識から飛ばしているような状態もよく見受けるようになった。
さらに、穏やかな状態や関係だったものが、ちょっとしたきっかけで、スイッチが入ったようにあるいは別の状態や関係と入れ替わったかのように激しい感情を突出させる子どもたちも見られる。
これらは、こころの中の自己部分をスイッチオン・オフしたり、入れ替えたりしてしのいでいる現代人の姿を反映しているのかもしれない。
そこで今回は、今の思春期の子どもたちが、どのようにこころのスイッチングを用い、適応(こころの成長)に難しさを生じているか、そういう子どもたちに対して私たちはどのような支援をしていったらよいかを考えていきたい。
進め方としては、シンポジストの方々に、それぞれが日常臨床の中から、今回のテーマについて、事例を素材にしながら話題提供をして頂いて、議論していく。指定討論者には引き続き、乾 吉佑先生にお願いする。思春期心理臨床にとって大切なことがワクワクとしかも実感を持って感じられるシンポジウムにしていきたいと思う。
思春期の子どもとかかわる医療、教育、福祉その他の領域の方々のご参加を呼びかけたい。
※ 臨床心理士ポイント申請予定
【 思春期 と『こころのスイッチング』 】 杉原 幹夫(杉原心理相談室)