このシンポジウムは、思春期の心理臨床について、われわれの日常の心理臨床活動を検討し討論を深めていくことで、相互に交流しながら、思春期の心理臨床にとって大切な視点を共有していきたいというものである。
前回は「思春期と幼児化」についてとりあげた。そこでは、未発達な問題を積み残していることが確認され、対応として、その発達的な課題を見ながら思春期の子の情緒的な問題、関係性を理解しつつ、 ウィニコットのいうHoldingやコンフロンテーション、ビオンのいうコンテインという機能が必要であることが、臨床の実際を踏まえて確認されたと思われる。今回はさらに、思春期の子の心の発達を促し、自立していくことを支援していくために、かかわる大人側がどういう態度やかかわりをしていくことが必要かについて「構造化」という切り口から考えてみようというものである。思春期の心理臨床において、例えば、バウンダリー(境界)の持てなさや、衝動コントロールの悪さに対してまとまりをつけていけるように援助していくために、基本的な治療構造を設定、維持するだけでなく、枠付けや限界設定、あるいは父性的態度などのさまざまな構造化の意味などを臨床的に検討していくことが必要ではないかと思われる。
今回のテーマを考えるにあたって、実際、現場でどのように思春期の子の心の発達や自立に向けてのかかわりをイメージし、どのような対応が工夫されているのか、あるいはどのように考えていけばよいのかということを「構造化」という観点から考えてみたい。
進め方としては、シンポジストの方々から、それぞれが日常臨床の中で、『思春期と構造化』というテーマについての考えを、事例を素材にしながら話題提供をして頂いて、議論していく。そして指定討論者には引き続き、思春期の心理臨床を初め、幅広く奥深い臨床感覚を我々に提供し続けてきておられる乾 吉佑氏にお願いする。思春期心理臨床にとって大切なことがワクワクとしかも実感を持って感じられるシンポジウムにしていきたいと思う。
思春期を扱う心理臨床家のみならず、思春期の子どもとかかわる医療、教育、福祉その他の領域の方々のご参加を呼びかけたい。
※ 臨床心理士ポイント申請予定
『思春期と構造化について』 杉原 幹夫(杉原心理相談室)