このシンポジウムは、思春期の心理臨床について、われわれの日常の心理臨床活動を検討し討論を深めていくことで、相互に交流しながら、思春期の心理臨床にとって大切な視点を共有していきたいというものである。
まず、思春期の大きなテーマのひとつとして、同性同年代の友達関係(人間関係)と、親との関係の変化が挙げられる。そこで第1回目の2006年度は、思春期の仲間体験の大切さとそれをどのように提供していくかというテーマを活動集団療法的な側面から考えてみた。そして第2回目の2007年度では、思春期における新しい対象関係がどのように展開されるか、あるいはどのように困難が生じそれに対してどのように援助していくかというテーマを取り上げた。
今回は、思春期自体が内的対象喪失を体験する時期であることから『対象喪失』という大きなテーマで考えてみたい。心身の大きな(質的な)変化を体験するこの時期に、個人差はあれ誰もが経験する内的対象喪失を子どもたちはどのようにくぐっていくのか、そういう時期にまた、積み残された「時期遅れのモーニング」として過去の対象喪失の問題が顕在化してくる問題、あるいは思春期の真っ只中で体験される内的、外的対象喪失の問題をどのように理解し援助していくかなどについていろいろと考えてみたい。
進め方としては、話題提供者の方々から、それぞれが日常臨床の中で、『思春期と対象喪失』というテーマについて考えていることを、事例を素材にしながら話題提供をして頂いて、議論していく。そして指定討論者には、昨年に引き続き、思春期の心理臨床を初め、幅広く奥深い臨床感覚を我々に提供し続けてきておられる乾吉佑氏にお願いした。思春期心理臨床にとって大切なことがワクワクとしかも実感を持って感じられるシンポジウムにしていきたいと思う。
今回は、時間もしっかり取って、有意義なシンポジウムにしたいと企画した。フロアの積極的な参加を期待したい。思春期を扱う心理臨床家のみならず、思春期の子どもとかかわる医療、教育、福祉その他の領域の方々のご参加を呼びかけたいと思う。
杉原 幹夫(杉原心理相談室)