
このシンポジウムは、私たちの日常の心理臨床活動を検討し討論を深めていくことで、相互に交流し ながら、思春期の心理臨床にとって大切な視点を共有していきたいというものである。
アタッチメント(愛着)理論は、不安や恐れの情動が強くなったときに他者にくっつくことで安心・安全の感覚を維持回復する機能を持つ「他者とともにある安心感」の理論である。子どもたちはこうした仕組みによってもたらされる安全の感覚、つまり「心の安全基地(secure base)」に支えられて、外 の世界への探索や学習を安定して行い、また円滑な対人関係も構築していくと考えられている。
思春期の子どもたちは、取り付く島もない態度をとったかと思うと急に甘えてみたり、オンラインの世界に没頭し内に籠ったり、行動や症状で表現したりと、様々な様相を見せる。支援者として、困っている子どもたちに手を差し伸べたいと思うことも多くある。しかし、否定的な感情を強く向けられたり、 手を差し伸べても手応えが得られなかったりすると、支援者の不安も活性化される。そんな彼らと私た ちにとっての「心の安全基地」とはどのようなものだろうか。
そこで今回は、思春期の発達を「心の安全基地」という視点から考え、支援者にとっての自然な感覚 で行っている実践の意義を再確認したり、本質的な支援とは何か、を考えることに役立てたい。
進め方としては、シンポジストの方々に、それぞれが日常臨床の中から、今回のテーマについて、事例を素材にしながら話題提供をして頂いて、議論していく。指定討論者には引き続き、乾吉佑氏にお願いする。思春期心理臨床にとって大切なことがワクワクとしかも実感を持って感じられるシンポジウム にしていきたいと思う。
思春期の子どもとかかわる心理臨床家のみならず、教育、医療、福祉など幅広 い領域の方々のご参加を呼びかけたい。