このシンポジウムは、われわれの日常の心理臨床活動を検討し、討論を深め、相互に交流しながら、思春期の心理臨床にとって大切な視点を共有していきたいというものである。
今回は、「こころのシャッターをおろす子どもたち」というテーマで考えてみたい。最近の子どもたちとかかわる中で、「傷つくことも傷つけることも避けて、表面的にしかコミュニケーションがとれない」「個々の課題にきちんと向き合えず、シャッターをおろすように、こころを閉ざしてしまう」といった子どもたちに出会うようになった。また、「その場その場で、上手に切り替えながらやっているように見えても、こころの中では四苦八苦している」という子どもたちもいる。こういった子どもたちの特徴には共通点があるように思われる。一方で大人たちも、うやっていいのかわからない中で、なんとか子どもたちにかかわろうとしている状況である。
性格特性を表現する用語に「スキゾイド」がある。「社会的に孤立している、感情表現が乏しい、外界への興味関心が低い」といった特徴で定義されてきたが、現代では「社会的なかかわりは持つものの、実は表面的で本質的にはかかわりを避けている」といったタイプが増えてきていると考えられる。
そこで、現代の思春期の子どもたちの特徴を「スキゾイド」という観点から検討し、どういったこころの動きが起きているのか、そしてこころの成長にどのような影響が生じているのか、私たちはどのような支援をしていったらよいのかを考えていきたい。
進め方としては、シンポジストから、それぞれが日常臨床の中から今回のテーマについて、事例を素材にしながら話題提供をして頂いて議論していく。指定討論者には、思春期の心理臨床をはじめ、幅広く奥深い臨床感覚を我々に提供し続けておられる乾吉佑先生に引き続きお願いする。思春期心理臨床にとって大切なことがワクワクと、しかも実感を持って感じられるシンポジウムにしていきたいと思う。
思春期の子どもとかかわる心理臨床家のみならず、教育、医療、福祉など幅広い領域の方々のご参加を呼びかけたい。
※ 臨床心理士ポイント申請予定
【思春期における現代のスキゾイド】 岡田 幸彦(トポスの森)